畑の歴史

縄文人に認められた場所
平川ワイナリーが位置する余市町沢地区では、ヌッチ川によって丘陵地や沖積地が形成されました。地質は火山活動に由来し、母材の風化、流水作用、腐植の蓄積によって肥沃な土壌が生成されました。日当たりのよい南斜面に広がる平川ファームのブドウ畑の周囲では、古くから海、川、山の食材に恵まれてきました。縄文時代には海面が高く、現在の第1農園の丘のふもとまで海が迫っており、狩猟採集を通じた縄文人の生活が営まれていました。畑の下には国宝級の縄文土器を生み出した5000年前の竈の跡が残っており、「沢町遺跡」と名付けられています。
余市町沢地区の繁栄
「澤」の町は、江戸後期にヌッチ川筋が切り開かれて形成されました。明治初期には小売商店、料亭、銀行等が軒を連ね、港を有し、国鉄余市駅ができるまで澤町は余市の中心でした。ヌッチ川上流の豊丘町は、江戸時代より余市鉱山が開発され、昭和中期には周辺に映画館や病院、演劇場までもが建ちならび、入植者で繁栄を極めました。同時に、丘陵地ではリンゴ、洋ナシ、サクランボの栽培が成功を収め、余市で最も古い果樹産地が形成されました。
果樹産地としての飛躍
1980年代には、これまで栽培されてきた果樹を引き抜いて、醸造用ブドウ栽培への挑戦が始まり、余市のワイン産業の基礎ができあがりました。
の圃場地では1950年に義父から引き継いだ藤城議さんが桃やリンゴの栽培を成功させ、65年の長きにわたり余市町の先進的農家として名声を博しました。藤城さんは2014年に引退し、引き継いだ平川ファームがドイツ系、フランス系品種のブドウ栽培へ挑戦し、現在に至ります。 区(沢町、豊丘町、梅川町)の面積は55k㎡あり、北海道有数のブドウ産地に飛躍する可能性を有しています。
の圃場地では1950年に義父から引き継いだ藤城議さんが桃やリンゴの栽培を成功させ、65年の長きにわたり余市町の先進的農家として名声を博しました。藤城さんは2014年に引退し、引き継いだ平川ファームがドイツ系、フランス系品種のブドウ栽培へ挑戦し、現在に至ります。 区(沢町、豊丘町、梅川町)の面積は55k㎡あり、北海道有数のブドウ産地に飛躍する可能性を有しています。

畑の変革

畑の発展と味わいの追求
自社畑の広がり
2014年に第1農園取得後、2017年に第2農園、2023年に第3農園と拡張し、現在農地21ha、植栽面積13.5haを有しています。2024年の生産量は70トンであり、平川ワイナリーは、全て平川ファーム産のブドウで仕込まれています。畑で酒質個性は決まっており、フィールドブレンドはされていません。また一部、北海道大学のブドウを委託醸造しています。小さくも強い農業経営体を目指しており、フランス系品種のみに頼らず、早熟性のブドウからも世界に通じるワインづくりを目指しています。
品種名非公開とローカル性の追求
ワイナリーのイメージを有しているケルナーは現在4区画あり、全ての区画で味わいの個性が違います。もし土地に名前があれば、土地の名前をワインの名前にしたいところですが、歴史が浅く、区画に名前がないので、土地ごとのコンセプトをワイン名にしています。ワインは単一品種ごと、区画ごと、またブドウのポジションごとに分けて仕込まれています。北海道は区画ごとに味わいのバラエティーさが豊かであり、ローカル性を重視し、世界中でこの畑だけの酒質個性を追求しています。
ブドウのポジションごとに分けて仕込まれる
ブドウのなる位置で味わいの個性が違うために、一本の樹から何回かに分けて出の収穫があり、それそれの収穫のタイミングで違ったワインになります。例えば、同一区画で、ロゼのスパークリンワイン、辛口ロゼワイン、赤ワインの3種類違うワインができることがあります。スパークリングワインやセカンドワインは、早摘みのブドウから生まれます。セカンドワインは「スゴンヴァン」の名前で商標登録されており、日本一おいしいセカンドワインであることを目指して仕込まれています。
6次産業化としての精神
農業の先に醸造があり、醸造の先にレストランがある。そのような想いで、食中酒としてのワインを生み出すことを重視しています。それは、ワインと料理との関係で、ワインが美味しくなることよりもお料理が美味しくなることの方が圧倒的に多く、ワインはそのような存在として考えているからです。いくつかのワインは料理があって、ワインが生まれています。レストランで得られたインスピレーションを持って畑に立ち、平川ファームの自然環境が有する土、空気、光、水の各要素を解釈して、この土地ならではの、食のためのワインをひたすらに生み出して参ります。


200年維持できる畑の確立を目指して
余市町沢地区の気候風土
余市町は、北海道の積丹半島の付け根に位置するブドウの冷涼産地であり、夏は温暖です。気象庁(余市町豊丘観測点)における1995年∼2024年の年間平均気温は8.5℃であり、年間日照時間は1493時間(4∼10月は1143時間)です。日本海側を流れる暖流の影響で冬の気温はマイナス10℃を下まわらず、氷点下にならない雪の中でブドウの樹は寒さから守られます。余市町沢地区では、生育期には山側からの冷涼な空気と海側からの温暖湿潤な空気とがぶつかり合い、寒暖差によって豊かなアロマや酸の骨格が生み出されています。長い歳月によって生まれた表土を守っており、非常に土の状態がよく、根圏が深い園地の確立を目指しています。化学的な肥料や除草剤は使用していません。
畑の四季
春、地球温暖化の影響で雪解けが年々早まってきています。真冬には最大1.5mまで積雪がありますが、3月下旬に入ると融雪が進み、冬の間に杭の上まであげていた架線を75cmの位置に結び、母枝固定を開始します。4月、5月は夜温が低く、6月初旬までは遅霜のリスクがあります。開花は6月下旬で、この時期に強雨と重なると花かすが生じたり、結実不良の被害があるので、雨が少ないことを願います。夏の気候になると雑草の伸長が加速します。園地内では除草材を一切使わず、株間は草生栽培を行っているので、ブドウ樹周り、畝間の除草は、刈払機やモアで行います。7月、8月は気温の上昇と共に新梢が一気に成長し、誘引作業が間に合わない忙しさとなります。樹勢管理と共に、摘芯作業、ブドウ房周りの通気性確保のための除葉、キャノピーマネージメントを行い、熟期に入ります。収穫は9月中旬から11月初旬まで毎日続きます。収穫終了後12月末まで雪が降る中での剪定、枝引き、架線上げの過酷な作業が続き、真冬の到来となります。冬の間、剪定されたブドウ樹たちは、雪の下で春を待ちます。
改植のサイクル
植え付けは毎年5月中旬から6月初旬にかけて実施します。雪の重量は越冬時にブドウ樹に大きな負担となっており、年間5%ぐらいの樹は重みで破損してしまいます。そのために3年目から12年目を生産年齢としています。樹が積雪や獣害によるダメージを受けても、光合成環境を維持できるよい樹形を守ってゆくことが大切であり、また区画ごとに植えられている樹齢は同じであるべきと考えています。そのためブドウの樹が破損したり、枯死した場合でも、その場所に単独で新しい苗の補植は行いません。いくらよいワインを作るからといっても経営が成立するとは限らないのが農業です。この区画が有する品質をひたすらに追求する精神とともに、不作と呼ばれる年でも生産量をしっかり生み出してゆくことを重視しています。そのために全区画で13年未満の改植のサイクルを作ることが大切と考えており、広い畑を持ち、区画毎にマネージメントを行って、輪作してゆける生産体系の確立を目指しています。
目標
平川敦雄はこれから先、200年持つ畑を作り上げることを目標としています。平川ファームのこの立地の畑は日本のグランクリュだよねと認められる品質を持続的に生み出すこと、そのための生産基盤を整えてゆくことが初代社長の役割として考えています。年々、気象変動の影響により、20年ほど前は熟しにくかったブドウも熟すようになってきています。晩熟性のブドウ栽培は、ワインの酒質面では非常に面白いのですが、熟期が遅い品種の栽培に重心を置くと、収穫後に迫ってくる真冬の冷気と積雪環境に対応できず、登熟不良となって、凍害を受けやすくなります。そのために広い経営面積を持ち、早熟性のブドウからも高品質のワインを生み出してゆくことが会社としての生命線です。平川ワイナリーでは、熟期の遅いフランス系品種に頼りすぎず、経営の中心はドイツ系品種にあるとも言えます。ただ年々、果汁中のpHが上がってきており、リンゴ酸由来の酸の美しさを維持することが難しくなってきており、酒質の課題は畑で解決しなければならいと考えています。厳しい気候風土の中から、冷涼産地である北海道らしい区画のバラエティーさ、アロマの豊かさ、透明感、余韻の長さを全てのワインに込めてゆきます。余市の区画から、世界に通じる、世界中の料理のためのワインを追求します。

平川ファームの地勢
第1農園(沢圃場)
- 地形
- 南西向き斜面
- 標高
- 25m~43m
- 表土
- 非アロフェン質黒ボク土(70cm)
- 母材
- 風化した凝灰質砂岩(火山性)
- 根圏(最深部)
- 130㎝(深い)
- 排水性
- 良好
- 風
- 南風(山由来)&北風(海由来)が交わる。
- 日照に関する情報
- 南西方向のため東/ 南東方向と比較すると朝陽は少なめで強めの西日を受ける。
第2農園(豊丘中央圃場)
- 地形
- 南東向き斜面
- 標高
- 34m~65m
- 表土
- 非アロフェン質黒ボク土(20cm)
- 母材
- 風化した凝灰質砂岩(火山性)
- 根圏(最深部)
- 50㎝〜60cm(やや浅い)
- 排水性
- 良好
- 風
- 南風(山由来)の影響を受け、海由来の風を受けない。
- 日照に関する情報
- 南東方向のため朝陽をしっかりと受ける。
第3農園(豊丘ヌッチ圃場)
- 地形
- 南西向き斜面(日当たりがよい)
- 標高
- 18m~41m
- 表土
- 非アロフェン質黒ボク土(30〜70cm)
- 母材
- 小石を含む沖積土(ヌッチ川由来)/風化した凝灰質砂岩(火山性)
- 根圏(最深部)
- 80㎝〜130cm(場所によって)
- 排水性
- 良好
- 風
- 土地が広がっているため風が分散し、比較的穏やか。
- 日照に関する情報
- 南西方向のため東/ 南東方向と比較すると朝陽は少なめで強めの西日を受ける。
